恵比寿1-11-15

今や、


ファミクラいてきた\(^o^)/

ファミクラ行きたい〜♡


な、この時代。



へ?なにがどうなってそうなったの?

こちとら不思議で仕方ない。


少なくとも平成のはじめまではわたしも同じような気持ちだっただろう。

ショップでは販売していないステージ写真を売っている(きゃは♡)

ファンレターをタレント本人が取りにくることがある(あわよくばきゃは♡)


もちろん、間違ってはいなかった。



恵比寿駅を出て、えびすさんの銅像のロータリーを左に、角にはちっこいコンビニ(たしかスリーエフ)があった。

小道を行くと右手には激辛ラーメン屋。

ひょいと右に曲がるとそこに当時のファミリークラブはあった。


建物は決して新しくも大きくもなく、どちらかといえば


え??ここ?何かの間違いでは?


カラカラと扉を開けると、左手の壁沿いにはステージ写真が、タレント別の1週間のスケジュール(もちろんざっくり)、右手には各メンバー別にファンレターが整理されたカゴの棚がある。


そして、真正面には、物々しくデスクが並び、ズラリと強面の女性が座っている。

運が悪ければ、1番奥にはパンチパーマのおばさんが座っていた。



用事がなければここに来てはならない。

写真を買うならサササッと番号を記入し、受付かもしれない手前のお姉さんに


「◯◯くんの写真をお願いします」と伝え、出来るだけおつりのないように紙とお金を渡す。


今では番協(きゃは♡)ってやつも、


「◯月◯日の、◯◯の番組協力に参加させていただきたいので必要書類を持参しました。よろしくお願いいたします」

と、身分証諸々を提出する。


この敬語を、一語一句間違えてはならない。

間違えでもすればやり直し、受付のお姉さんの機嫌が悪かったり奥のパンチパーマさんの怒りのアンテナに触れようものなら退出させられた。


辛ラーメン屋さんまでの道のりから、右手に曲がるその道からは私語厳禁。右側通行で2列になってはならない。友達同士でファミリークラブ内に入ることは禁止。ファミリークラブ前で待ち合わせは禁止。ファミリークラブ内で声を発してはならない。いいのは受付前で要件を述べるときだけだ。


番協の当落確認もファミリークラブ内で行われていた。申し込み時に当落確認は◯月◯日の◯時から◯時まで、その時間に必ず来ることが申し込みできる条件だった。

番協の当日はもちろん、その当落確認の日時が、学生なら明らかに学校にいる時間だったり社会人なら仕事中のはずだったりもすると「◯月◯日◯時は◯◯さんは休みです」的な証明書も必要だった。


当選したらお礼文を述べながら受付に行き番協当日の詳細を渡されるか、その当落確認のまま当選者だけ集められてファミリークラブ内で説明があった。



ファンレターのカゴの前にはコピー機があった。そのコピー機あたりにはファンのコたち数人が毎日入れ替わり立ち替わり「お手伝い」というやつをしていた。

ファンレターの整理(もちろん中身は開けない)や、ファンクラブ入会案内の封入作業などを主にやっていた。


本日◯時までお手伝いをさせていただきたいのですが何か私に出来ることはありますでしょうか?


もちろん受付のお姉さんにそう申請しなければならない。



春休み夏休みは、ファミリークラブ(きゃは♡)って何も知らない人たちが恵比寿駅から列をなしてやってきてたので、その整理もしてた。


年末から2月にはプレゼントやチョコレートが大量に送られていた。ファンレターもそうだが中身が無事とされたものだけがファミリークラブに届いていた。中身を開封してあるわけでもないのに、チョコレートのニオイはファミリークラブ内にムンムンと充満していた。



番協行きたい〜って感情と共に、あの扉を開けて一斉に浴びせられる痛々しい視線に耐え、ど緊張で敬語を使い、よくわかんない証明書とか用意しなければならない苦痛を考えたら、番協なんて行かないほうの選択肢を選ぶ人が多かったと思う。

ちょっとした劇団に入り客席を埋めるサクラってやつになるコとか、テレビ局に何らかのコネを持つようになるとか、サクラ専門のバイトってのに登録してる人もいたな。



饒舌に上手いこと言うおもろいおばさんが近年人気になっていて、あの時代のパンチパーマさんがまさかこんなことになろうとは当時思ってもみなかったし、もちろんファミリークラブという場所がこんなにもひらけた場になるだなんて夢にも思わなかった。


ファミリーに行く=怒られる


という定義が恵比寿時代に出来上がってしまっている私は、

たとえ渋谷にファミリークラブがあろうとも、

行ってみたいな(きゃは♡)という感情には一切ならない。


でも、あの時代のファミリークラブの空気感は今思えばなんだか誇らしいなと思ってしまう。


何かの末期かもしれないけど。